何年か前に友人と山奥のスナックへ行った時のお話。スナックと言っても、女性従業員がいなかったので、スナックと言えるのかどうなのか。ここらあたりはスナックの定義になるので、取り敢えず脇に置いておくことにして、とにかく居酒屋風ではなく、日本風でもなく、洋酒のボトルが棚に並べられている小洒落たお店でした。
そこへ行く前にかなりの量を飲んでいたので、ちょっと小腹が空いた状態で、何かを食べようとメニューを見ると、色々ありました。目についたのはラーメン。こういうお店にもラーメンがあるのかと、何となく妙に感心しながらも、ラーメン食べたら終わりでしょう、ラーメンは締めに食べる物という勝手な一般常識で、パス。ちょっと目線をずらすと、ピラフの文字が見つかりました。大好きな「エビピラフ」もあります。ピラフなら食べてからまた飲めるし、おつまみにもなる、ということで「エビピラフ」を注文。
待っている間に連れの友人と他愛のない会話をしていると、友人の眼がお店の隅にくぎ付けに。つられて見てみると、壁にダーツが掛かっています。ああ、これが「ダーツバー」というやつか、「スナック」ではない訳ね、とまたどうでもいいことを考えなら、楽しそうに矢を投げている若者を見て、流石に一緒に遊ぶ気にもなれず、グダグダと年配者どうしの会話が続きます。そうこうしているうちに「お待ちどう様」とエビピラフがテーブルに置かれました。おお、美味しそう。

別に期待もしていないし、お腹に入れば何でもいいかぐらいの気持ちで頼んだのですが、これが予想に反して美味しいことこの上なく、エビもプリプリしていて、ご飯も艶があり立っているという表現でいいのか、文句なく素晴らしい。友人はといえば、お酒を飲んでいる時は食事物は食べない主義らしく、どことなく冷たい目線で見ています。こっちはお腹が減ってるからしょうがないもんね、「ウマいウマい」とスプーンで口に運びます。「エビが新鮮だな、こんな山奥でこんなエビが食べられるなんて」と感動のつぶやきに友人はボソッと「冷凍ですよ」と冷たい一言。その顔に薄っすらと侮蔑のような気配が感じられ、悔しいので「そりゃそうだ、新鮮なエビを置いておくのも大変だし、冷凍でしょうがないか」続けて「でも味は美味しいし、お米も素晴らしい、バターも効いてるし」と友人の顔を見ると、今度は戸惑った様子で、あとは無言。
ここで初めて気が付きました。冷凍なのは「エビ」ではなく、「エビピラフ」その物だったんです。ふだん冷凍食品を食べる習慣がまったくなかったので、ぜんぜん気が付きませんでした。そういえばスーパーの冷凍食品売り場に色々な冷凍のピラフを見た記憶があります。でもまあ、山奥だからしょうがないか、お腹が膨れればそれでいいじゃない、と思いながらも、そんなこともわからないのかと小馬鹿にされているようで、ちょっとだけ落ち込んだ気分になりました。
そして時は移り舞台は大都会。色々な問題が指摘されながらもオリンピックが開催された傷だらけの東京、その選手村で話題になった料理が餃子でした。あまりにも美味しいと外国人選手の間で評判になり、YouTubeにも食レポがアップされたそうです。さすが日本の餃子、素晴らしい! きっと豚肉は最高級、新鮮キャベツで種を作り、ほどよいニンニク、焼き加減もジューシーで、外国人選手の方々の舌を喜ばせたに違いない。誇るべき日本の国民食、餃子。どんなもんだい、と思いきや、それは味の素の冷凍餃子でした、というオチがついていました。我ながら学習能力がないのか、未だに冷凍食品は家庭で食べる物という思い込みで生きていて、まさかオリンピックの選手村の食事が冷凍食品だと考えもしない、浅はかな生き物のまま過ごしておりました。
選手村の餃子が冷凍食品と聞いて、その瞬間のガッカリ感は否めませんが、よくよく考えてみると、今や普通のお店でもチェーン展開していればセントラルキッチンがあり、冷凍素材を各お店へ配送して調理するのが一般的になっているので、別にオリンピックの選手村でも、冷凍素材を使っていても何ら不思議はありません。いやむしろ、冷凍素材の方が味も一定していて、何よりも衛生管理の面でも安心できます。色んな種類のメニューがあるので、その日によって人気メニューが違えば、残り物の心配をしなくてはいけませんが、冷凍食品なら効率よく管理できます。味も、外国人選手が絶賛しているのですから、何も問題ないではないですか。

ということで、味の素の冷凍餃子買ってきました。これが凄い、何が凄いかというと、油がいらない、水もいらない。フライパンに並べて蓋をして中火で焼けばいいだけ。心配していたレンジでチンは、レンジマークにバツ印がついていました。いくら何でも選手村の食堂で、餃子がレンジでチンでは興ざめでしょう。そこだけは死守しています。どんなものかと食べてみると、これがまた素晴らしいお味。外国人選手の方々が世界一美味しい餃子と言っているのですから間違いありません。調子に乗って3日食べ続けたところ、日に日に飽きてきて、これはきっと化学調味料特有の味がいけないのだろうか、と疑心暗鬼に陥ってしまいました。
やっぱり手作り餃子が一番と、豚ひき肉・キャベツ・ニラで自家製種を作り、餃子の皮でくるんでヒダヒダを作って喜びの作業終了。ちょっと調子こいてたくさん作り過ぎてしまったので、それからまた3日餃子三昧です。最初は、やっぱり餃子は手作りだね、と美味しかったのですが、2日、3日と続くと、やはり飽きがきて、これは科学調味料云々ではなく、単に同じ物を続けて食べたから飽きただけではないのか、おまけに手作り餃子は日ごとに鮮度は落ちるし、これなら最初に作った時に冷凍しておけは良かったと後悔しきりで、複雑な心境になりました。どうすればいいんだろうか。
By 料理パパ3号
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