新潟でトマトを栽培する「曽我農園」の投稿がSNS上で話題になっているそうです。今まで「尻腐れトマト」と言われ、ほとんど廃棄されていたトマトが、「闇落ちとまと」と名前を変えただけで人気商品に早変わり。ネーミングの大切さを思い知らされました。
そもそも「闇落ち」とはどういう意味なのか。本来なら善の側の人間が、何かのきっかけで悪の側に変わっていく。これをダークサイドに堕ちると言い、「闇落ち」ではなく「闇堕ち」が正解らしいのですが、有名なのは「スターウォーズ」のダースベーダー
。バットマンの「ダークナイト」という映画にも、そのような設定はありました。それどころかアニメの世界では、闇堕ちキャラ全開らしく、なるほど今回の「闇落ちとまと」で人気の出た要因がよくわかります。

そうなると普通のトマトも戸惑っていることでしょう。みずみずしく、きらめくような、真っ赤なトマト、傷ひとつなく大切に育てられ、小さなトマトも大人気。スーパーでも、その彩りが人々を楽しませ、食卓の人気者です。そのような完全無欠のトマトにとって、なんで今さら傷ものの尻腐れに話題をさらわれてしまうのか。今まで勝ち組と思っていたのに、あのような醜い負け組に人間どもが群がるなんて理不尽この上ない。どうせ一時のことでしょう、人間なんて気まぐれよ、わたしたち勝ち組の地位は、決して揺らがない。
と、ここまで考えて、何かおかしいな。トマトがそんなこと考えるのだろうか。普通のトマトも傷ついたトマトも、自然の摂理に従って淡々と生きているだけではないのか。普通のトマトが傷ついたトマトをバカにしたり、傷ついたトマトが普通のトマトを羨んだり、そんなことする訳がありません。これはきっと、トマトの世界に人間社会の理屈を当てはめようとする、そのような考え方が間違っているのではないのか。
人生に勝ち負けなどない筈なのに、勝ち組・負け組などというくだらない概念を作り出し、その価値観をはびこらせ、そして、自分は勝ち組だと思う人は、負け組を憐れむという滑稽な優越感にひたり、負け組と思いこまされた人は、自分の立場をのろい、周りを押しのけてでも優位に立とうという考えにとらわれ、本来すぐ近くにある幸福に気づくこともなく、ひたすら亡霊を追い求めていく。それが今の人間社会なのでしょうか。「清く正しく生きる」という言葉は、もはや死語に近く、そのような言葉を語る者は嘲笑される世の中になっているような気がします。
いったい勝ち組の定義とは何なのか。裕福になり、贅沢な暮らしをする。その他に何があるのか、それが全てなのか。テレビやネットが先導していく社会は、この世界のごく表面の世界であります。が、今やそれを通じて世界の人間同士が繋がっていて、その価値観は共通のものと勘違いして生きています。しかし、そのような価値観とは関係ない人生を送っている人はたくさんいます。いえ、大勢の人が今日を明日を生き抜くために懸命に生きています。そのような人たちは、表には出てきません。テレビにも出ないし、SNSでも有名になりません。誰にも知られず、知られようともせず、ひっそりと、そして道を踏み外さないように立派に生きています。そのような人々がこの社会を支え、たとえ社会の歯車といわれようと、それぞれの役割りを果たしながら、無意識のうちに助け合って生きています。その大切な部分が崩れると、社会は大混乱に陥いるでしょう。

テレビやネットで映し出される世界が、自分が生きている世界であるとの錯覚に陥りやすいのですが、人はそれぞれ自分の心の中で生きている筈です。そして、人間ひとりひとりの心の世界は深く無限であり、何ものにも支配されてはいけない。そこをつまらない価値観で埋めつくす必要はないわけで、あの四角い画面、今や文庫本の大きさにも満たない画面の奥に広がる世界、その世界から受け取る情報は有意義なものでしょうが、同時に入ってくる得体の知れない塵あくたのような戯言、それを心の中に入れるか入れないかは、間違いなく個々人が選択できる筈です。ぼんやりと生きていたら、知らないうちに自分の心が自分の心でなくなってしまう。かなり怖い世界に生きているんだなと、「闇落ちトマト」が教えてくれました。
今日の食材として買ってきたトマトを見つめていると、美しさと同時に、無心なものを感じます。いったいこの感じは何なのか、その無心なものに勝ち負けという概念を映してしまう人間の心とは何なのか。まっすぐに生きているトマトに勝ち組という汚名を着せるなんて、危うく罠に陥るところでした。恥ずべきは自分の心。危ない危ないと反省しつつ、気づかせてくれた生産者の方々に感謝しながら、トマトの美味しい料理を考えてみます。
By 料理パパ3号
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