寒い季節には、温かいおでんが好まれます。そのおでんの中でも、一番人気の具材は大根だそうです。その大根が今、危機に瀕しています。危機と言っても、生産量が低下したという話ではなく、全くの逆で、生産過多、つまり、余って値崩れして、さばききれない状態にあるということです。農家から出荷する時の値段が1箱14本で10円を切り、箱代が1箱100円するそうで、これでは農家もお手上げです。
原因は、コロナの影響での飲食店への時短要請です。それで需要が激減して出荷できないので、余った大根は止む無く廃棄という運命を辿るみたいです。飲食店からの注文激減ですから、みなさん大根を食べましょうのレベルでは解決できないでしょう。廃棄するのは勿体ないと言って農家を責めるわけにもいきません。だったらタダで配ればいいと言っても、そんな事をしたら、実際に売られている大根まで売れ残るので、もう八方ふさがりです。大切に育ててきた大根を廃棄しなければならない農家の悲しみはいかばかりでしょう。

今年は台風の影響もなく、せっかくみずみずしく育った野菜を前にして頭を抱える気持ちは、当事者でないとわかりません。野菜が安く手に入って嬉しいと喜んでいる消費者と、陰で泣いている生産者。コロナの影響は、飲食店だけでなく、あらゆるところへ波及していることを実感せざるを得ません。
そして廃棄される大根。いったいどこへ行ってしまうのだろうか。潰され粉々にされ、どこかへ放り捨てられてしまう大根の運命。もともと人間に食べられるのだから同じとはいえ、人間の体の中に入って、細胞を活性化させ、生きるのを助けてくれるのだから、人間の体の一部として生き続けるのは間違いないでしょう。それなら土の上に捨てられれば、土地の肥料として役立ち、大地の生命の源となるかもしれないので、それもよしと考えることで納得するとしますか。
干し大根にすればよいとか、切り干し大根ならと考えてもみますが、それも賞味期限があるようですし、そのようなことは生産者の方々が考えた上での廃棄という結論なのですから仕方ありません。
大根というのは不思議な野菜で、今まで、腐ったのを見たことがありません。たまに冷蔵庫をチェックすると、忘れていた野菜が酷い状態で見つかることがあります。溶けてドロドロになったきうり、皮が黒くなって表面がヌルヌルした人参、皮が干からびて芽が飛び出し、好き勝手に触手を伸ばしているじゃがいもは、まるでエイリアンのようです。それに比べて大根は、黒い斑点こそあれ、ドロドロもヌルヌルもなく、表面の皮はカサカサしてて、切るとスが入っていますが、食べられなくはない。

古くなった大根は、ちょっと人間の体に似ているのではと、想像してみました。大根が古くなって、表面にできる黒い斑点は老人性のシミ、肌のカサカサも似たようなもの。切ったらスが入っているのは骨粗鬆症かな。でも食べることができる、生きている。
何やら暗い話になってきましたが、これも現実。もし食べないのなら、やはり暗い冷蔵庫の中に置いておくのではなく、光に当てて、立派な干し大根として生涯を終えるのが大根にとっても幸せなのかな。
そういえば大根にまつわる言葉で「大根役者」とか「大根足」とか、大根のイメージを下げる言葉がありますが、「大根役者」の語源は色々ありまして、代表的なのは「大根は食あたりしない」という意味から、当たらない役者を「大根役者」と言い、決して大根の悪口ではありません。むしろ褒めているくらいです。「大根足」というのも、昔の大根は白くてすらっとしており、もともと褒め言葉として用いられていたそうです。大根の名誉挽回です。
By 料理パパ3号
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