「顆粒だしの味噌汁をありがたがる男はATMとしては優秀」。これは何とも意味ありげなお言葉。某掲示板に書き込まれていました。
事の発端はある男女のお話。付き合い始めの男女が、緊急事態宣言で会えない日々を過ごすことで恋心が燃え上がり、久しぶりに会った時に男性のほうからプロポーズ。女性も泣きながらOKということで、まずは、めでたしめでたし。
そして、一人暮らしの女性の部屋に彼女の母親が訪れ、味噌汁を作ってくれて、母親が帰ったあとに、その男性と一緒に味噌汁を飲んだところ、男性が変な顔をして「この味噌汁、ダシはちゃんと取ってるの? もしかして味噌を溶かしただけ?」。ああ、やってしまいました、相手の親の料理にケチつけちゃった。マズいパターン。女性は改めて飲んでみると、昔から大好きないつもの味です。女性の母親は、きちんと昆布とかつお節で出し汁を取って味噌汁を作る習慣で、子どもの頃から慣れ親しんだ味です。これはやってられない。「じゃあもう飲まないで」とお椀を奪って大ゲンカ。

この件では渋々女性のほうが折れて、後日、今度は男性の実家で昼食のお食事会。男性の父も母も優しい人で、温かく歓迎してくれました。ところが、そこで出された味噌汁、あれ? これは顆粒だしの味噌汁じゃないの。女性は全てを理解しました。ちゃんとダシを取ってないのは、男性の母親のほうだったのです。帰り道にそのことを指摘して、またも大ゲンカ。今度は修復不可能なところまで行ってしまったようですが、この程度のことで婚約解消になるなら、元々うまくいかない二人だったわけで、味噌汁だけが原因ではないことは明白でしょう。逆に良かったのかもしれません。味噌汁さまさまです。
ここで思うのが、ああ、「おふくろの味」って、まだ生きてるんだなと、何だかほっこりした気分になります。昨今では、やれ家事の分担がどうのこうの、料理は女性が作るのが当たり前とは何だコノヤロウ、とか色々騒がれますが、しっかり「おふくろの味」でケンカしているとは何とも微笑ましい、と言ったら、ちょっと不謹慎かもしれません。
案の定SNSでもプチ炎上で、結構色んな意見の果し合いが見られました。その中で出てきたのが冒頭の「顆粒だしの味噌汁をありがたがる男はATMとしては優秀」というお言葉。何となくわかるような気がします。これは受け取り方によって、褒めているとも考えられますが、やはり小ばかにしているのでしょう。ATMという言葉に悪意があります。「ATMとしては優秀」とは、よく稼ぐ男という意味で、女性(妻)にとってのATMの役割りきちんとはたし、経済的に迷惑をかけない、ということでいいのかな。ダシは昆布とかつお節でとらなければいけない、などと小さな事にこだわらず、要は美味しければいいわけで、サッと食べて、あとは仕事のことを考える。それで奥さんも助かります。顆粒だしの味噌汁だって美味しいですから。いや、そのほうが美味しいかもしれません。食品会社の開発部が総力を上げて美味しさを追及しています。美味しいに決まっています。

昔、肉じゃがをよく作っていた時があり、人に食べてもらったりしていたのですが、いつもは昆布とかつお節でダシを取って作っていたのに、その時は時間がなくて顆粒だしのお世話になったことがありました。ところが、それを食べた人に「今日の肉じゃがは美味しい、いつもより美味しい」と言われ複雑な気持ちになったことがあります。そして別の人は、その人は料理人だったのですが「インスタント使っただろう」と見事に喝破してくれました。さすが料理人。「いや、美味しいって評判ですよ」と言うと、「美味しければいいのか」と、ちょっと怪しい雰囲気。その人曰く、じゃがいもにしみ込んでいる微妙なダシ加減が好きらしく、顆粒だしではそれが味わえないとかで、なるほど一理あるなと、今にして思い出してしまいます。そして、その人はATMとしてどうだったんだろうと、余計なことまでつらつらと。
確かに「美味しければいいのか」、料理は美味しさだけ追及すればいいのか、食材に様々な調味料を駆使して、この世の物とは思えない味に仕上げればいいのか。それでは、ひょっとして大切な物を置き忘れてしまうのではなかろうか。
By 料理パパ3号
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