千葉県の九十九里浜で、四十数キロにわたって特産のハマグリが大量に打ち上げられている、というニュース。四十数キロといえばマラソンの距離で、これは大変な量のハマグリが打ち上げられ、行き場もなく砂浜に横たわっている極めて壮観な光景が想像できます。きっと多くの人が押し寄せるだろうな、と思っていたら、どうも勝手に採っていけないらしく、九十九里浜では漁業権が設定されていて、ハマグリは一般の人が許可なくとることは禁止されているとか。どうして? こんなにたくさんあるのに、少しぐらいいいでしょう。放置されたハマグリはどうなるの? そのまま死んでしまったら、結構臭いが大変じゃないのかな。いったいどうなるのかと思い、気になって記事を詳しく読んでみると、打ち上げられたハマグリは、漁業組合が保護して、沖合に戻すことになっているみたい。
映像を見たくて、YouTubeで動画を観てみました。これが結構凄い光景で、やはりハマグリを採りに多くの人が押しかけていました。漁協の車も何台かでパトロールしていて、ハマグリを採らないように呼び掛けています。この状況に専門家の方は、原因がはっきりしないとかで、それならひょっとして問題のあるハマグリかもしれないし、食べて大丈夫かという疑念も沸いてきます。そして行き着くところは、巨大地震の前触れではないかと、よくあるパターンです。

そもそも、どうして海のハマグリを勝手に採ってはいけないのだろうか。やはり地元の利益を守るためなのかな。九十九里浜はハマグリが特産だそうで、焼きハマグリを人気メニューにしているお店もたくさんあるらしいく、スーパーや魚屋さんでも、それなりの値段で売られているでしょう。それなのに目の前で大勢の人がハマグリを採って、タダで持って帰られては、やはり気分が良くないか。
このニュースに触れているうちに、遠い昔の記憶がよみがえってきました。
あれは高校生の頃、部活の練習も飽きたので、みんなで海へ行こうという話になり、5、6人で地元の海水浴場に直行。高校生といえども、まだ子どもみたいなものです。波打ち際ではしゃぎまわっていると、足元に何かあたるので見てみると、それはハマグリ。これはいいやと、すぐにハマグリ採りに一生懸命になり、知り合いから聞いた方法で、ハマグリを採り始めます。砂浜にはそんなにハマグリはいないので、海の中、ちょうど海水が腰のあたりのところまで行き、当時流行のツイストダンスよろしく腰をクネクネさせ、両足首を砂にもぐらせ、足の指先で砂の中のハマグリを探します。そして器用に足の指を使ってハマグリを拾い上げ、海水パンツの中へいれます。いやあ、採れる採れる。みんなで海パンを膨らませて砂浜へ戻り、さてどうしよう。
これは焼きハマグリでいくしかないね。誰かが浜茶屋(海の家)へ行って網を借りてきました。みんなでその辺りに落ちている木端を拾い集め、網焼きの準備完了。火をつけようにもマッチがないので、また浜茶屋へ行って、ついでに醤油まで借りてきました。浜茶屋のおばさん、何やらニコニコ笑っています。

火をおこし、網の上にハマグリを乗せます。やがて貝がパックリ開き、醤油をかけてジュワっといい匂い。そうやって食べた焼きハマグリの思い出。とてつもなく美味しかった。どうりで、これまで焼きハマグリを食べた時に、何となく物足りなさを感じていたのは、そのためか。心のどこかにその記憶が残っていて、思い出すことはなくても無意識のうちに比べていたのかもしれません。今回のニュースで、その時の記憶が鮮明に思い出され、改めて記憶というものの不可思議さを再認識したしだいです。
と同時に考えてしまうのは、楽しい思い出ばかりではなく、あの時ニコニコ笑っていたように見えた浜茶屋のおばさんも、本当は不愉快な思いをしていたのではないだろうか、食べたあとの貝殻はきちんと片付けただろうか。当時のことを考えると、好き勝手に食べまくり、あとは散らかし放題だったに違いない。となると、その食べかすを片付けた人もいるわけで、その人はどう思っていたのだろうか。
その時は天真爛漫にハシャギまわり、周囲のことなど気にもせず、楽しいひと時をむさぼるように過ごした若者たち。今になって、周りに迷惑をかけていたのかもしれないという思いが浮かび上がるとは、これも年齢の積み重ねによるわざなのかもしない。
こんな些細ことは、もう誰も覚えていないだろうが、記憶の隅には残っていて、ふとした機会に思い出されてきます。ずいぶん昔のことでも、心の中では、すぐ目の前に起こっていること。その心の中の情景で、反省と感謝をもってケジメをつければ、これからもきっと楽しい思い出として生き続けてくれるでしょう。
By 料理パパ3号
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