セレブの女性タレントがインスタで、創作料理「豆もやしと豚肉の中華和風タレ」を披露。それに対して、『〇〇ちゃんセレブなのにモヤシなんて安いものも食べるんですね』『〇〇ちゃんが調理されるとモヤシが高級食材に見えます』というフォロワーの反応。モヤシ可哀想、ずっと前から可哀想。庶民の家計を助け続けて数十年。その間、地位が上がることもなく、安い食材としてスーパーに積み上げられて来ました。これほど社会に貢献してきた食材も珍しい。おそらく、今後も続くでしょう、モヤシの運命。

いっそのこと品不足になれば、そうなれば、人はモヤシの有難みがわかるかもしれない。その時になって、モヤシとはこんなに美味しかったのかと、ゆっくり味わいながら噛みしめることでしょう。昔の映画で「ソイレントグリーン」という映画があり、そこでは、近未来に世界中が食料不足に陥り、人工的な食糧が配給制になって、新鮮な野菜など、とても手に入らない時代が描かれています。その中で、主演のチャールトン・ヘストン(「ベンハー」のあの人、もしくは「猿の惑星」のあの人)が、やっと手に入れたレタス一枚を、フォークで感慨深げに口に入れるシーンがありました。このシーン、別にモヤシでもいいんじゃないかな。でもレタスのほうが絵になるからしょうがないか。
結局、たくさんあって安いから軽んじられるのだろう。品不足になって味わうモヤシと、あり余っている状況で味わうモヤシと、味には変わりない筈。モヤシの値段が高騰して高級食材になったら、人々は高級料理としてモヤシを崇め奉るのだろうか。その時モヤシは、どう思うのか。
高級ホテルで、モヤシを使った料理を出されて怒った客がいたという話を、どこかの記事で読んだことがあります。高級ホテルなのに、こんな安い食材を使うとは何事か、ということらしい。例えばそのお客さんが、普段は質素な生活をしていて、日常生活でモヤシをたくさん食べていたとして、たまには贅沢しようと、観光地の高級ホテルに宿泊。そこでモヤシ料理を出されたら、成程ガックリくるかもしれない。気持ちはわかります。だけど、これってモヤシに対する裏切りではないだろうか。普段モヤシに助けられているのに、リッチな場所に来たら、モヤシを蔑む。微妙に納得いかない。モヤシに心があるなら、教えてほしいその気持ち。
まあ、そのお客さんは裕福なお客さんで、普段からモヤシには目もくれない生活をしていたのかもしれないし、ひょっとしたら、そのホテルで調理されているモヤシは高級モヤシかもしれません。青森県に「温泉もやし」という随分高級なモヤシがあるみたいです。いや埼玉の深谷市にもあるみたい。だからホテル側も、このモヤシは滅多に手に入らない幻のモヤシです、とでも言えば、お客さんも納得したことでしょう。

こうなると、モヤシの世界にもヒエラルキーが存在してきます。人間のお腹の中に入ればみな同じなのに、高級モヤシは胃袋の中で他のモヤシを下に見て蔑むとか、いや、高級モヤシと普通のモヤシを一緒に食べることは多分ないので、たとえば、納豆が胃袋に入ってきたら、「近寄るんじゃない」とか、トリュフやフォアグラが入ってきたら、すり寄っていくとか、人間社会の縮図みたいなものです。
そうなると、いつもスーパーに並べられている一般大衆モヤシが健気に見えます。頑張れよ、と声をかけたくなります。高級モヤシにしても、きっと、そんな意地悪なモヤシではないでしょう。モヤシに値段をつけて、高い安いと言っているのは人間です。当のモヤシは、そのようなことに関係なく、一生懸命生きています。そして人間の体の中に入って、人間が生きるのを助けてくれます。高級モヤシも、自分が高級だとは思ってもみません。あるがままの人生です。
でも、どうせ食べるなら、高級モヤシのほうがいいかな。だって人間だもの、ミツオ。
By 料理パパ3号
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