【孤独のグルメ】原作者久住さんのTwitterに「先日取材の途中、駅裏の中華料理屋で食べたラーメン。実に実に普通で、おいしかった。なんでこういうのが東京になくなったんだろう。店長さんは腕組みしてニラまなくていいから。」とありました。フォロワーの反応の中には、「普通に美味しい街中華な醤油ラーメン沢山有りますよ」という返信もあり、確かに街中華に行けば昔風のラーメンを食べられますが、街中華自体が減ってきて、それに、ラーメンを食べようと思ったら、ラーメン専門店へ行くのが当たり前の世の中になってしまっています。いつからこうなってしまったのか。

ラーメンといえば、昔は庶民の食べ物で、いや今でも庶民の食べ物ですが、料理として立派な地位を確立していて、バリエーションも豊富。塩味・味噌味・とんこつスープ、それにトッピングもいろいろ。おまけに海外にまで進出して、日本料理の代表として認知されています。でも最初はそうじゃなかった。もっと野暮ったい食べ物だった。そんな気がします。だから、昔は店長さんも腕組みなんかしない。ドンブリに親指突っ込んで「はい、どうぞ」なんて珍しくもない。
映画「男はつらいよ」第1作で、車虎次郎が身内とケンカして故郷を去る時、上野の地下の薄汚い食堂で泣きながら鼻水をすすり、ズルズルと口に運んでいたのは、ラーメン。続いて2作目、惚れたお嬢さんの話で、源公が「お嬢さんがお嫁さんになったら」とか言い出し「今日の晩御飯何だと思う?...ラーメンよ」と続けば、すかさず寅さん顔をしかめて「バカヤロー、あのお嬢さんがラーメンなんか作るか、てめえの考えは貧しいからいけねえよ」源公「それじゃ何作るんですか?」寅さん「決まってるじゃねええか、スパゲッチーよ」と得意げに応える。ここでのラーメンは、インスタントという意味合いもあるのでしょうが、それにしても「ラーメンなんか」とは。そして「スパゲッチー」が上品な料理の代表格とは。
時は移り昭和の終わり頃、北海道富良野で、子ども二人と定食屋みたいな所で食事をしている中年男。そう、「北の国から」の有名シーンです。もう閉店時間も過ぎていて早く帰りたい店員。五郎さんが店員にせかされお金を払うと、すぐに片付けようとする店員。五郎さん「子どもがまだ食ってる途中でしょうが」と怒鳴ってしまいました。その時食べていたのが、ラーメン。普通のラーメンで、チャーシュー麺でも味噌ラーメンでもなく、ただのラーメン。ちょっと惨めなシーンに、ラーメンがよく似合うんです。それがどうしたものか、出世しちゃいまして、いつの間にか「スパゲッチー」に大差をつけて国民食の栄誉を獲得するまでになりました。
それに連れて、ラーメンを作る人の世間的評価もうなぎ登り、テレビにも頻繁に出るようになり、スターに近い存在としてもてはやされ、「ラーメン道」なる言葉も出現して、その勢いもとどまる所を知らない。お店では私用の会話はいけない、本を読みながら食べてはいけない、そして、店長さんは腕組みしてニラむ、という流れになったみたいです。別に全てのラーメン店が、腕組みしてニラむわけではありませんが、一部そういうお店があったことは確かです。そこで、ある雑誌で「飯屋のオヤジが何であんなに威張ってるんだ」と言われる始末。「飯屋のオヤジ」という言い方もどうかと思いますが、確かに勘違いする料理人もいて、ネットでそれを批判された時に居直って反論したら、総攻撃にあって敢え無く撃沈というケースもありました。自分を偉く見せたいのは人間の常ですが、匙加減を間違えて悲惨な眼にあった例はたくさんあります。

ラーメンはいつから進化したのか、と考えてみると、「味噌ラーメン」の出現が衝撃的だったように思います。最初に「味噌ラーメン」と聞いた時に、味噌汁にラーメンを入れて何が美味しいのかと思いましたが、そんな単純な発想は愚かの極み、研究に研究を重ねたのでしょう、予想をはるかに超えて、それまでの醤油ラーメンを凌駕する位置づけになってしまいました。そして、とんこつラーメンなるものも現れ、かつおダシのラーメンを食べた日には、こんなのアリか、という印象で、煮干しダシまで出てきて百花繚乱。今や、本当に「普通のラーメン」が懐かしい時代に突入しています。ああ、昔懐かしいラーメンを食べたい、という気持ちはわかります。でもラーメンを食べるとなると、どうしてもラーメン専門店に足が向いてしまう、このジレンマ。
いっそのことラーメン専門店で「普通のラーメン」というメニューで、昔ながらの普通のラーメンを出してもらえたら、とも考えましたが、それはそれで「街中華」のラーメンの存在意義がなくなるので辛いところです。
By 料理パパ3号
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